「日本の外洋ヨット」のBW33解説覧に記載されたコメント

「Blue Water 33」はワントンとハーフトンの中間に位するグラスで,
1972年3月の東京ポートショウに出品され,その性能に大きな関心が寄せられたが,
その年の5月の大島レースにデビューしていきなり2位, 6月の初島レースでは初優勝,
7月の鳥羽レースでは2位と,期待にたがわず素晴しい走りを見せた。
その後も順調に次々と進水する各艇とも好成績を収めていることは
「舵」誌でご存知の通りである。

設計者は武市俊氏。
リンフォースエ業のプロググション・ヨットで,特徴としては全長の10mにくら
べて水線長は7.8mと長く,特に水線巾が広くフラットなラウンドビルジの
中排水量型の艇体と大きなフォアトライアングルのセールプランの
オールラウンドな性格を持ったボートである。

この「BW-33」の設計にあたり,武市氏が基本的な方向として目指したものは,
パワフルな帆走性能と'快適な居住性の, 2つの要素を同時に採り入
れること"であり,この考え方は氏が69,71年と2度にわたる
シドニー〜 ホバート・レースに出場して,世界の名だたる外洋レーサーを
詳細に観察し本格的な長距離外洋レースの生々しい体験に基くものであろう。

外観的な特徴は一―高いフリーボートを持ち, ミニマムまで切りつめたスターンの
オーバー・ハングと45°に傾斜した大きなリバース・トランサム, さらにマスト位置を
ミドシップ近くにお…というセールプランの重点を, よリフォア・トライアングルにおいた
セール・アレンジーと言ったところにある。
一方,水面下の形状で特徴と言えるものは,側面積が小さく,アスペクト比の高い
全鋳鉄のフィンキールであり,特にスパンフイズ。
フロー(キール下端のリーサイドからウエザーサイドヘの流れ。
これによってフィンの効率の低下および形状抵抗の増加を来たす)
の減少を計って,下端を傾斜させたことが,特異の形状をかたちづくっている。

また,舵およびスケグは,可能な限り後端に寄せられていて, しかもフィンキールに
比べて,かなり大きいバランスと思われるほどの大きな面積を与えている。
これらは,操舵性能に重点を置いたフィロソフィーに導かれていると言えよう。

デッキ・アレンジは,最近の外洋レーサーの一般的な傾向であるスピネーカー,
あるいはジェノア・シートのシーティング・ポジションを,マストサイドで行なえるように
ウインチが配置され,セールを直接, 日で見ながらトリムできるようになっている。
荒天などの場合は,従来どおリコグビットでもトリムできるよう考慮されている。

デザイナーはこの艇について,「あくまでパワフルなスピードと,強気な性格のポートを意図して
設計したもので, レーティングを下げることによってレースの勝率を上げることより,
若干レーティングは高くてもそれを上まわる性能と,重量軽減に対し
てさほど神経を使わずに充分な水、食料,乗員を乗せて,使いやすく,ゆとりのある居住区によって,
長期の航海に楽しく挑戦できるボートになることが願いである」と述べているが,
正にその通りの性格を持った艇である。
これは,沖縄レースをはじめ八丈島,神子元島などの強風の大レースでの活躍で裏付けられたと言ってよい。